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公開日:2015年9月28日

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平成27年9月28日 答申第516号(香川県情報公開審査会答申)

平成27年9月28日(答申第516号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成26年11月20日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
土庄町と香川県の間における下記年月日の○○問題に関して協議の記録

  • (1)平成22年12月21日、平成23年3月9日(以下「本件請求」という。)
  • (2)平成23年3月3日、平成23年4月14日、平成23年6月13日(以下「本件請求外請求」という。)

2 実施機関の決定

  • (1)本件請求について
    実施機関は、公開請求のあった行政文書として、「土庄町との協議記録(平成22年12月21日)」(以下「本件行政文書1」という)及び「土庄町等との協議記録(平成23年3月9日)」(以下「本件行政文書2」という)を特定し、別表の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分を行い、平成26年12月18日付けで異議申立人に通知した。
  • (2)本件請求外請求について
    実施機関は、本件請求外請求に対しては、公開請求があった行政文書が不存在として非公開決定処分を行い、平成26年12月18日付けで異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分を不服として、平成27年1月27日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「行政文書「情報一部公開決定通知書」に記載の「次の通り一部公開することと決定しましたので通知します」を取り消すとの決定を求める。」というものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。
本件「一部公開」の決定理由は、条例の趣旨に反した、違法判断であるから、本件決定理由を破棄して全部公開することを求める。

3 行政不服審査法第25条第1項ただし書の規定に基づく口頭意見陳述における主張

口頭意見陳述による主張は、おおむね次のとおりである。

  • (a)土庄町は、平成23年3月31日に土地売買の仮契約を締結している。それ以前に町職員は県職員と協議をしており、その内容を知りたい。町が買収した土地については、4年経っても変わっていない。土庄町が当該仮契約をした理由を知りたい。これが主目的である。
  • (b)公開請求により公開された平成22年12月21日及び平成23年3月9日の協議録の黒塗り部分を公開してもらいたい。特に、平成23年3月9日の協議録の出席者のうち黒塗りが誰なのか知りたい。
  • (c)香川県は一部公開決定における非公開処分の根拠を条例第7条第4号の規定に求めるが、このような判断は、第1条において「県政に対する県民の理解と信頼を深め・・・県政の発展に寄与することを目的とする」と定めた条例の立法趣旨を著しく貶めるものであり、誤りである。
    本件は「迷惑施設設置の最たる」廃棄物処理施設のための用地確保が絡んでいるのであるから、ひとり行政のみでは解決できない。地元土庄町の担当者が何度も現地自治会に足を運び説明会を開催して、なお一層混迷を深めた事案であることから、請求者は許可権者たる香川県に情報の提供を求めた。にもかかわらず、それがあのように非公開の連続では一層の疑惑を深める。
    香川県が根拠とする条例第7条第4号は、他の自治体との関係を重視する規定であるが、廃棄物行政は町民全体の健康、生活に密接に関係しているので、本件はむしろ条例第7条第6号の例外規定「人の生命、健康、生活又は・・・を保護するため、公にすることが必要」な場合に該当する。
    香川県が一律に条例第7条第4号を適用しているのは、怠慢以外何ものでもなく、失当である。

4 追加の意見陳述における主張

追加の意見陳述による主張は、おおむね次のとおりである。
異議申立人は、平成23年3月から6月にかけて、土庄町がいかなる経緯で2万坪余の廃棄物処理場用地を購入したのかを知りたくて情報公開請求をしたのであるが、香川県から開示された協議の詳細はほとんど黒塗りされていた。
後になって、平成23年に土庄町が購入した土地は、本来の目的である廃棄物処理場設置場所としては不適地であることが判明した。そのため、以来4年が経過した現在も土庄町は次期廃棄物処理施設の建設に着手もできないままであり、香川県は、本件異議申立人の公開請求に対して当時の詳細を黒塗りで隠して、隠ぺい工作をしているのである。
本件土地売買については、当事者らが当該土地が廃棄物処理施設設置場所としては不適地であることを熟知していながら、また、緊急の状況でなかったにもかかわらず、売買を急いだものと見受けられる。当時、香川県の担当者が毅然とした決定、指導、アドバイスをしていれば今日の混迷は回避できたのである。異議申立人は、当時の香川県と土庄町の間の事前協議の経緯を正確に把握したいために公開請求したが、香川県は黒塗りの連続である。地域住民の安全安心が最優先するはずだが、国県町の行政同士が庇いあって、条例第7条第4号規定を引き合いに出して一部公開処分をしている。

5 意見書における主張

意見書による主張は、おおむね次のとおりである。

  • (a)知事は、平成26年12月18日付けの行政文書一部公開決定通知書においては、「公開しない理由」として条例第7条第4号を根拠としていたにもかかわらず、非公開理由等説明書の「5 非公開条項の該当性」においてはその根拠が第7条第1号のみにすり替わっている。
  • (b)非公開理由等説明書の5(2)において、知事は「迷惑施設と言われ、その整備に当たっては、施設設置場所近隣の住民からの反対運動が起こることも往々にしてあるために」と言うのであるから、よけいに行政担当者には近隣住民に胸襟を開いた真摯な協議が求められている。当件の場合、その過程において、知事は採石法、森林法等多岐にわたる関連法令に関した事案や、採石事業者、採石組合の利害が錯綜していることを主張し、適正な行政事務遂行に支障をおよぼすおそれがあることに言及するのであるならば、なおさらに簡単明瞭に協議内容の真相を市民に公開するべきである。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は次のとおりである。

  • (1)条例第7条第1号の該当性について
    条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。
    本件行政文書2には、個人の氏名、所属及び関係性が記載されていることから、これらは特定の個人が識別される個人に関する情報であることは明白である。よって、これは条例第7条第1号本文に該当する。また、当該情報は同号のどのただし書にも該当しない。
  • (2)条例第7条第4号の該当性について
    条例第7条第4号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定めている。
    本件行政文書1には、土庄町の廃棄物処理施設整備事業の計画に関して、土庄町と他の公共団体間で情報交換した内容が記載されており、その内容について関係者への確認を行っていないため事実関係の確認が不十分な情報が含まれている。また、地元説明等の現状に関する情報が記載されており、地元の範囲や情報収集の時期、及びその真偽について関係者への確認を行っていないため事実関係の確認が不十分な情報が含まれている。
    以上の情報に関して、一般に廃棄物処理施設は、迷惑施設と言われ、その整備に当たっては、施設設置場所近隣の住民からの反対運動が起こることも往々にしてあるため、特に、新設の廃棄物処理施設整備に関する情報は構想段階においても極めて慎重な取扱いを要するものである。
    また、地元説明等の現状に関する情報については、記録された内容と地元関係者の認識が異なる場合は、今後の事業の執行の際に、混乱又は紛糾することが懸念される。
    したがって、現在も検討過程にある未成熟な情報を公開することによって、町廃棄物処理施設整備事業の実施時期の遅延など町の以後の当該事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、また、県と町の協議に係る情報を公開することによって、以後の県と町との間の円滑な意見交換が損なわれ、ひいては、県の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
    よって、条例第7条第4号に該当することは明白である。
    本件行政文書2には、土庄町の廃棄物処理施設整備事業及び採石法、森林法等関連法令に基づく県の事務に関する土庄町担当者と県担当者との間における協議内容の情報が記載されている。
    「1 土庄町からの計画の説明」については、町の廃棄物処理施設整備構想の経緯や県への協議の経緯、他の計画地の検討状況、採石事業への町の対応の考え方、及び組合への町の対応の考え方が記載されている。
    「2 県から土庄町への指示事項」については、今後の背後地を含めた同施設整備計画策定に対する県の考え方の提示、施設の位置選定に当たっての質問事項、及び他の事業計画との整合性を保つために必要なスケジュールの希望が記載されている。
    その他には、組合から組合の意向についての聞き取り内容、他の土地所有者の意向に対する伝聞情報が記載されており、その内容は町の施設整備計画と密接な関係のあるものが記載されている。
    さらに、添付資料の「町の新し尿処理施設整備計画スケジュール及び新ごみ最終処理施設整備計画スケジュール」には、廃棄物処理施設の具体的な計画内容が示されない中でのスケジュールが表記されている。
    町が廃棄物処理施設を整備しようとする土地は、採石業者を事業主体とした採石法に基づく岩石採取計画の認可区域、及び森林法に基づく林地開発許可区域内にあり、さらには自然公園法の普通地域内にあることから、町が当該施設を整備するに当たっては、採石業者がそれらの許認可を廃止し又は区域の変更等の手続後に、改めて町が事業主体となり所要の許可を受ける必要のある土地である。しかしながら、現在のところ、採石業者及び町から所要の申請手続きはなされていない状況である。
    また、町は、廃棄物処理施設整備事業を実施するに当たって、環境省の所管する循環型社会形成推進交付金をその財源に見込むため、将来的な事業実施予定について、通常、当該施設整備の前年度には「循環型社会形成推進地域計画」を策定し、当該施設整備を当該計画中に位置付けることとなっているが、現在に至っても当該計画は策定されていない。
    以上の情報に関して、一般に廃棄物処理施設は、迷惑施設と言われ、その整備に当たっては、施設設置場所近隣の住民からの反対運動が起こることも往々にしてある。現在に至っても、町の施設整備計画は、その施設整備時期の見込みも不明確な状況であり、同施設整備計画が停滞している状況である。
    したがって、土庄町の廃棄物処理施設整備事業及び採石法、森林法等関連法令に基づく県の事務に関する情報で、現在も検討過程にある未成熟な情報を公開することによって、県の当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、また、町廃棄物処理施設整備事業の実施時期の遅延など町の以後の当該事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。さらに、県と町の協議に係る情報を公開することによって、以後の県と町との間の円滑な意見交換が損なわれ、ひいては、県の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
    よって、条例第7条第4号に該当することは明白である。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容等について

本件行政文書1は、土庄町の廃棄物処理施設整備事業の計画に関して、町から県へ行った説明の要旨を県内部の記録又は報告のために作成した文書であり、その内容について関係者への確認を行っていないため事実関係の確認が不十分な情報が含まれている。
本件行政文書2は、町の計画する廃棄物処理施設整備事業及び採石法、森林法等関連法令に基づく県の事務における土庄町と県との相互間における協議に関する情報であって、最終的な意思決定前の検討が不十分な内容を県内部の記録又は報告のために作成した文書であり、また、その内容について関係者への確認を行っていないため事実関係の確認が不十分な情報が含まれている。
また、添付されている書類の内容は、町の新し尿処理施設整備計画スケジュール及び新ごみ最終処理施設整備計画スケジュールであり、町が説明資料として県に提出したものである。

3 非公開情報該当性について

  • (1)条例第7条第1号の該当性について
    条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
    しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。
    この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
    本件において本号に該当するため非公開とされたのは、本件行政文書2のうち、協議記録中の出席者の個人の氏名、所属及び関係性が記載された部分である。これらはいずれも特定の個人が識別できる個人に関する情報にあたるため、本号本文に該当すると判断される。
    もっとも、本件異議申立人は、口頭意見陳述において、廃棄物行政は町民全体の健康、生活に密接に関係するため、本件は「人の生命、健康、生活・・・を保護するため、公にすることが必要」な情報にあたる旨主張している。そこで、本件非公開部分が本号ただし書イに該当しないか、以下検討する。
    条例は、第3条第2項で、実施機関に対し、個人に関する情報が保護されるように最大限の配慮をすることを義務づけており、公開を原則とする情報公開制度の下においても、個人に関する情報は最大限に保護されるべきであると考えられている。そのため、これを受けて規定されている本号ただし書イの解釈に当たっても、当然、個人に関する情報が保護されるように最大限の配慮をする必要があると考えられる。したがって、本号ただし書イにより公開されるのは、その性質上手厚く保護されるべき個人の正当な権利利益になお優越する公益がある場合に限られると解する。
    本件についてこれをみると、たしかに、一般に廃棄物行政が町民全体の健康、生活に密接に関係するものであり、その情報が一定の公益性を有していることは否定できない。しかし、本件で非公開とされた個人情報は、土庄町の廃棄物処理施設整備事業の計画に関して行われた協議に出席した個人の氏名等にすぎず、それ自体が町民全体の健康、生活に直結するような情報にはあたらないと考えられる。したがって、本件はその性質上手厚く保護されるべき個人の正当な権利利益になお優越する公益がある場合とは認められず、本号ただし書イには該当しないと判断される。
    また、他のただし書のいずれにも該当しないと判断される。
  • (2)条例第7条第4号該当性について
    条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
    この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
    • (a)本件行政文書1について
      本件行政文書1において、本号に該当するため非公開とされたのは、協議記録中のし尿処理施設の整備に関する協議内容及び協議記録中の地元対策等に関する協議内容のうち、公開する部分を除く部分である。審査会で見分したところ、当該非公開部分には、土庄町の廃棄物処理施設整備事業の計画に関して、土庄町と他の公共団体間で情報交換した内容及び地元説明等の現状に関する情報が記載されていることが確認された。
      これについて、異議申立人は、廃棄物行政が町民全体の健康、生活に密接に関係していること、地域住民の安全安心が最優先することを理由に、本件行政文書における協議内容をすべて公開すべきである旨主張している。
      たしかに、一般に、廃棄物の最終処分場のような施設の整備については、周辺環境への懸念などから社会問題となることもあり、積極的に情報を公開することにより、住民の不安を取り除き、住民の理解を得ながら計画を進めていくような公正で開かれた行政が求められるといえる。しかし、そのような場合であっても、未成熟な情報を公開することにより、住民に不正確な理解や誤解を与え、その結果施設の整備計画に関する意思形成に支障を及ぼすようなことなどは避けなければならない。とりわけ、新設の廃棄物処理施設整備に関する情報は、その影響の大きさから、構想段階においても極めて慎重な取り扱いを要するものと考えられる。
      本件行政文書1について実施機関に確認したところ、本文書は県内部の記録又は報告のために作成したものであり、記載内容について関係者への確認を行っておらず、上記非公開部分には事実関係の確認が不十分な情報が含まれているとのことであった。新設の廃棄物処理施設整備に関してそのような情報を公開してしまうと、当該地域の住民等に無用な憶測や不安、混乱を生じさせ、結果として町の今後の当該計画に関する意思形成に支障を及ぼすおそれがある。また、県と町の協議に係る情報を内容にかかわらずすべて公開してしまうと、以後、両者の間で率直な意見交換をすることが困難になるおそれがあると考えられる。
      したがって、現在も検討過程にある未成熟な情報を公開することによって、町廃棄物処理施設整備事業の実施時期の遅延など町の以後の当該事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、また、県と町の協議に係る情報を公開することによって、以後の県と町との間の円滑な意見交換が損なわれ、ひいては、県の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるという実施機関の主張は是認できる。
      よって、本件行政文書1において非公開とされた部分は、第7条第4号に該当すると判断される。
    • (b)本件行政文書2について
      本件行政文書2において、本号に該当するため非公開とされたのは、協議記録中の協議内容のうち公開する部分を除く部分、並びに、添付資料のうち、新し尿処理施設整備計画スケジュール及び新ごみ最終処理施設整備計画スケジュールの各項目の実施時期(備考欄を除く)である。
      審査会で見分したところ、当該非公開部分には、「土庄町からの計画の説明」として、町の廃棄物処理施設整備構想の経緯や県への協議の経緯、他の計画地の検討状況、採石事業への町の対応の考え方、及び組合への町の対応の考え方が、「県から土庄町への指示事項」として、今後の背後地を含めた同施設整備計画策定に対する県の考え方の提示、施設の位置選定に当たっての質問事項、及び他の事業計画との整合性を保つために必要なスケジュールの希望が記載されており、その他の事項として組合の意向についての聞き取り内容、他の土地所有者の意向に関する伝聞情報、町の新し尿処理施設及び新ごみ最終処理施設整備計画のスケジュール等が記載されていることが確認された。
      これらの情報について、上述のとおり、一般に、廃棄物の最終処分場のような施設の整備については、周辺環境への懸念などから社会問題となることもあり、積極的に情報を公開することにより、住民の不安を取り除き、住民の理解を得ながら計画を進めていくような公正で開かれた行政が求められていることは否定できない。しかし、そのような場合であっても、未成熟な情報を公開することにより、住民に不正確な理解や誤解を与え、その結果施設の整備計画に関する意思形成に支障を及ぼすようなことなどは避けなければならない。とりわけ、新設の廃棄物処理施設整備に関する情報は、その影響の大きさから、構想段階においても極めて慎重な取り扱いを要するものと考えられる。
      そこで、本件行政文書2に記載された協議の内容及び町の計画について実施機関に説明を求めたところ、土庄町が廃棄物処理施設を整備しようとする土地は、採石業者を事業主体とした採石法に基づく岩石採取計画の認可区域、及び森林法に基づく林地開発許可区域にあり、さらには自然公園法の普通地域内にあることから、町が当該施設を整備するに当たっては、採石業者がそれらの許認可を廃止し又は区域の変更等の手続き後に、改めて町が事業主体となり所要の許可を受ける必要のある土地であるが、現在のところ、採石業者及び町から所要の申請手続きはなされていない状況であるとのことであった。また、町は、廃棄物処理施設整備事業を実施するに当たって、環境省の所管する循環型社会形成推進交付金をその財源に見込むため、将来的な事業実施予定について、通常、当該施設整備の前年度には「循環型社会形成推進地域計画」を策定し、当該施設整備を当該計画中に位置付けることとなっているが、現在に至っても当該計画は策定されていないとのことであった。
      このことから、町の廃棄物処理施設整備計画は、現在に至ってもその整備時期の見込みも不明確な状況にあり、当該計画に関する情報及びそれに関連する採石法、森林法等に基づく県の事務に関する情報は、現在も検討過程にある未成熟な情報にあたると考えられる。
      それにもかかわらず、当該町の計画及び採石法、森林法等の関連法令に基づく県の事務に関して行われた町担当者と県担当者との協議の内容をすべて公開してしまうと、当該地域の住民等に無用な憶測や不安、混乱を生じさせ、結果として町の今後の整備計画に関する意思形成に支障を及ぼすとともに、それに関連する県の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。また、県と町の協議に係る情報を内容にかかわらずすべて公開してしまうと、以後、両者の間で率直な意見交換をすることが困難になるおそれがあると考えられる。
      したがって、土庄町の廃棄物処理施設整備事業及び採石法、森林法等関連法令に基づく県の事務に関する情報で、現在も検討過程にある未成熟な情報を公開することによって、県の当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるうえ、町廃棄物処理施設整備事業の実施時期の遅延など町の以後の当該事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるという実施機関の主張は是認できる。また、県と町の協議に係る情報を公開することによって、以後の県と町との間の円滑な意見交換が損なわれ、ひいては、県の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるという実施機関の主張も是認できる。
      よって、本件行政文書2において非公開とされた部分は、第7条第4号に該当すると判断される。
  • (3)異議申立人のその他の主張について
    • (a)非公開理由等説明書における理由の記載について
      異議申立人は、意見書において、実施機関が本件処分時の決定通知書においては「公開しない理由」として条例第7条第4号を根拠としていたにもかかわらず、非公開理由等説明書においてはその根拠が第7条第1号のみにすり替わっている旨主張している。この点について審査会で見分したところ、実施機関は非公開理由等説明書において、非公開とした理由に応じて第7条第1号と同条第4号をそれぞれ根拠として記載しており、それらは本件処分時の決定通知書における「公開しない理由」の記載と一致していることが確認された。したがって、非公開理由等説明書において非公開とした根拠がすり替わっているといった事実はなく、異議申立人の主張は認められない。
    • (b)条例第7条第6号ただし書該当性について
      異議申立人は、口頭意見陳述において、廃棄物行政が町民全体の健康、生活に密接に関係していることを理由に、本件は条例第7条第4号でなく、むしろ条例第7条第6号ただし書が規定する「人の生命、健康、生活・・・を保護するため、公にすることが必要であると認められる」場合に該当する旨主張している。しかし、当該規定は、同号本文の定め(いわゆる非公開約束情報)を理由に非公開とする場合の例外を定めた規定であり、そもそも同号本文の定めを非公開理由としていない本件においては、その適用の基礎を欠くといえる。したがって、本件が条例第7条第6号ただし書に該当するという異議申立人の主張は認められない。
    • (c)その他の主張について
      異議申立人は、その他種々の主張をしているが、いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
      よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

(省略)

別表
行政文書 公開しない部分 公開しない理由

1

 

  • 協議記録中、し尿処理施設の整備に関する協議内容(公開する部分を除く)
  • 協議記録中、地元対策等に関する協議内容(公開する部分を除く)
(条例第7条第4号該当)
土庄町の廃棄物処理施設整備事業に係る情報であり、現在も検討過程にある未成熟な情報であることから、公開することにより同町の以後の当該事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、また、県と同町の協議に係る情報であり、公開することにより以後の両者間の円滑な意見交換が損なわれ、県の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。

2

  • 協議記録中の出席者の個人名(公開する部分を除く)
(条例第7条第1号本文該当)
特定の個人が識別され得る個人に関する情報に該当するため。
  • 協議記録中の協議内容(公開する部分を除く)
  • 添付資料のうち、新し尿処理施設整備計画スケジュールの各項目の実施時期(備考欄を除く)
  • 添付資料のうち、新ごみ最終処理施設整備計画スケジュールの各項目の実施時期(備考欄を除く)
(条例第7条第4号該当)
土庄町の廃棄物処理施設整備事業及び採石法、森林法等関連法令に基づく県の事務に関する情報で、現在検討過程にある未成熟な情報であることから、公開することにより当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、また、県と同町の協議に係る情報であり、公開することにより以後の両者間の円滑な意見交換が損なわれ、県の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。

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