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公開日:2024年5月8日

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センターだより2024年

職員会議の一コマ 板目状圧痕のついた土器

 埋蔵文化財センターでは、月に一度、各職員間で情報共有を図るため、職員会議を行っています。特に各発掘現場やセンターでの作業成果や課題についての報告や、それを元にした意見交換などが行われます。今回はその一コマをご紹介します。
 ある職員が整理作業の過程で、土器の底についている模様のようなものに着目しました。鎌倉時代以降の素焼きの皿などの底には並行する筋が見えることがあります。これは「板目状圧痕」と呼ばれ、形作られた生乾きの土器が板の上に置かれた際に、板の木目が付いたものと解釈されてきました。この職員は、板の木目としては形状が異なるのではないかと考え、土器を静止したロクロからヘラなどで切り離した痕跡などの可能性について検討を行いました。
 実際に当時と同じ手法で土器を作り、ロクロから切り離す作業や切り離し後に板の上に置いた場合に土器の裏側に付く痕跡を確認しました。また、土器を置くための台になる割り材も製作しました。板は現代のようにノコギリで製材するのではなく、クサビなどを用いて丸太を縦割りにしてやや薄い板状の材を用意し、必要に応じてヤリガンナなどで表面を削り平滑にしていたようです。土器を置く台としてはおそらく平滑に仕上げたものではなく、粗割したままのものが使われたと考えられます。実際、実験で作った土器の裏側に付いた板の痕跡と遺跡出土の土器の裏面の圧痕はとてもよく似ていることが確認できました。また、静止したロクロからヘラで切り離すときれいに並行した筋が付きにくく、土器もひずみやすいことも確認できました。
 実験は仮説を実証するための大事な手法です。考古学でもその手法が有効であることを改めて認識することができ、有意義な会議となりました。
(5月8日)

会議風景 説明風景

会議風景

実験結果を説明する職員
用意した割り材 実験で板目状圧痕のついた土器
用意した割り材

出土した板目状圧痕のついた土器

実験で板目状圧痕のついた土器
 
実際に出土した板目状圧痕のついた土器  

 

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